「宇宙に行くと身長が伸びる」という話を聞いたことはありませんか?まるでSF映画のような話ですが、実はこれ、実際に起こる現象なのです。宇宙空間という特殊な環境下では、私たちの体にさまざまな変化が訪れますが、身長の伸びもその一つとして知られています。かつて日本人宇宙飛行士が「宇宙で身長が9センチ伸びた」と報告して大きな話題になったこともありました(その後、少し訂正がありましたが、それについても後ほど詳しく解説します)。
では、一体なぜ宇宙に行くだけで背が伸びるのでしょうか。そして、地球に戻ってくるとその身長はどうなってしまうのでしょうか。この記事では、宇宙飛行士の身長が伸びる驚きのメカニズムや、地球帰還後の体の変化、さらには「宇宙での身長の伸び」と「成長期の身長の伸び」の違いについて、わかりやすく解説していきます。宇宙の不思議な現象を通して、私たちの体の仕組みについても学んでいきましょう。
宇宙飛行士の身長が伸びるのはなぜ?仕組みと実際のデータ

宇宙空間に行くと身長が伸びるという現象は、医学的にも証明されている事実です。しかし、魔法のように体が大きくなるわけではありません。そこには、地球上では当たり前に存在している「重力」と、私たちの体を支える「背骨」の構造が深く関係しています。ここでは、なぜ身長が伸びるのか、その科学的な理由と実際に観測されているデータについて詳しく見ていきましょう。
無重力が背骨に与える影響とは
私たちが地球で暮らしている間、体には常に「重力」がかかっています。立っているときも座っているときも、頭から足の方向へ向かって、見えない力が体を押し縮めるように働いているのです。特に、体を支える柱である「脊椎(背骨)」には、上半身の重さが常にかかり続けています。
しかし、宇宙空間に行くと、この重力がほとんどない「微小重力環境」になります。地上で常に背骨にかかっていた圧力が、宇宙では一気になくなるわけです。重力による「上から押さえつける力」から解放されることで、体は本来の長さに戻ろうとします。これが、宇宙飛行士の身長が伸びる根本的な原因です。
椎間板が広がるメカニズムを解説
もう少し体の内側の仕組みに注目してみましょう。私たちの背骨は、1本の長い骨ではなく、「椎骨(ついこつ)」と呼ばれる小さな骨がいくつも積み重なってできています。頚椎、胸椎、腰椎など、合計で24個もの骨が連なっています。
この骨と骨の間には、「椎間板(ついかんばん)」というクッションのような組織が挟まっています。椎間板は水分を多く含んだゼリー状の組織で、普段は重力によって押しつぶされ、少し縮んだ状態になっています。しかし、宇宙空間で重圧から解放されると、この椎間板の一つひとつが水分を吸収して膨らみ、厚みを取り戻します。たった数ミリの膨張でも、背骨全体には23個の椎間板があるため、トータルすると数センチの身長アップにつながるのです。
実際には何センチくらい背が伸びるの?
では、具体的にどれくらい身長が伸びるのでしょうか。NASA(アメリカ航空宇宙局)やJAXA(宇宙航空研究開発機構)のデータによると、個人差はありますが、一般的には1センチから2センチ程度伸びるケースが多いと言われています。
中には、最大で5センチから7センチ近く伸びたという報告もあります。元の身長が高い人ほど、背骨も長いため、伸び幅が大きくなる傾向があるようです。ただし、どこまでも伸び続けるわけではなく、ある程度椎間板が膨らみきると、そこで身長の伸びは止まります。通常、宇宙に到着してから最初の数日から数週間の間にこの変化が起こるとされています。
【話題】9センチ伸びた?金井宇宙飛行士のエピソード
宇宙での身長の変化について、日本で大きなニュースになったエピソードがあります。2017年から2018年にかけて国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した、日本人宇宙飛行士の金井宣茂さんの話です。金井さんは宇宙滞在開始から約3週間後、「身長が9センチも伸びた」と自身のSNSで報告し、世界中を驚かせました。
「たった3週間でニョキニョキと。こんなの中高生のとき以来です」というコメントと共に発信され、大きな反響を呼びました。
しかし、この話には続きがあります。あまりの伸び幅にロシア人の船長から「それは伸びすぎだろう」と指摘され、再計測を行ったところ、実際には2センチの伸びだったことが判明しました。どうやら最初の計測時に体が浮いてしまい、正確に測れていなかったようです。金井さんはすぐに訂正と謝罪を行いましたが、この出来事は「宇宙に行くと身長が変わる」という事実を多くの人に知らしめるきっかけとなりました。
地球に戻ると身長はどうなる?元に戻る期間と体の変化

宇宙で背が伸びたとしても、残念ながらその身長はずっと維持できるわけではありません。宇宙飛行士たちは任務を終えると地球へ帰還します。重力のある世界に戻ったとき、伸びた身長や体にはどのような変化が起こるのでしょうか。ここでは、地球帰還後の身長の変化や、それに伴う体の痛みについて解説します。
重力の影響で身長が元に戻る仕組み
地球に帰還して着陸した瞬間から、宇宙飛行士の体には再び1G(地球の重力)がかかります。宇宙で膨らんでいた椎間板に対して、再び上から押し縮める力が加わることになるのです。
スポンジを思い浮かべてみてください。水を含んで膨らんだスポンジも、手でギュッと押さえつければ元の薄さに戻ります。これと同じことが背骨の間で起こります。重力によって椎間板から余分な水分が押し出され、開いていた骨と骨の間隔が狭まっていくことで、身長は徐々に宇宙へ行く前の高さへと戻っていきます。
元の身長に戻るまでにかかる時間はどれくらい?
身長が元に戻るスピードは意外と早いと言われています。宇宙での滞在期間や個人差にもよりますが、多くの宇宙飛行士は帰還後わずか数日から数週間程度で元の身長に戻ります。中には、帰還直後の数時間で急激に戻り始めるケースもあるようです。
何か月もかけて伸びた身長が、あっという間に戻ってしまうのは少しもったいない気もしますが、これが地球の重力というものの強さなのです。ですので、宇宙飛行士が「背が高くなったまま地球で生活する」ということは、基本的にはありません。
身長の変化に伴う「背中の痛み」について
身長が伸び縮みすることは、体にとって決して楽なことではありません。実際、多くの宇宙飛行士が宇宙滞在中や地球帰還後に「背中の痛み」や「腰痛」を訴えることが知られています。
宇宙で背骨が伸びるとき、背骨周辺の筋肉や神経も一緒に引っ張られます。これが軽い肉離れのような状態を引き起こし、痛みを感じさせることがあるのです。また、地球に戻ってきたときは、急激に椎間板が圧縮されるため、クッション機能がうまく働かず、腰に大きな負担がかかることもあります。NASAの研究では、宇宙飛行士の半数以上が腰痛を経験しているというデータもあります。
宇宙滞在と骨密度の関係性
身長の変化とは別に、宇宙空間では「骨密度」が低下するという重大な問題も発生します。無重力状態では骨に負荷がかからないため、体は「丈夫な骨を維持する必要がない」と判断し、骨からカルシウムを溶け出させてしまうのです。
骨が脆くなると、地球に戻った際の重力に耐えられず、骨折のリスクが高まります。そのため、宇宙飛行士は身長が戻る過程での痛みだけでなく、骨全体のケアも非常に重要になります。このように、重力環境の変化は、身長だけでなく骨の質そのものにも大きな影響を与えているのです。
身長が急激に伸びることによるリスクと対策

「身長が伸びる」と聞くと、多くの人にとっては羨ましい話に聞こえるかもしれません。しかし、宇宙飛行士という職業においては、身長の変化が予期せぬトラブルやリスクを招くこともあります。ここでは、現場で実際に懸念されている問題点や、その対策について深掘りしていきます。
宇宙服のサイズが合わなくなる問題
宇宙飛行士にとって最も深刻な問題の一つが、宇宙服のサイズです。特に船外活動(宇宙遊泳)で使用する宇宙服は、生命を守るための精密な装置であり、飛行士の体に合わせて厳密に調整されています。
もし身長が予想以上に伸びてしまうと、手足の長さが合わなくなり、宇宙服の中で体がうまく動かせなくなる可能性があります。膝や肘の位置がずれると、作業効率が落ちるだけでなく、関節を痛める原因にもなりかねません。そのため、現在はあらかじめ身長が伸びることを見越して、少し余裕を持ったサイズ調整や、アジャスター機能を持たせた宇宙服の設計が行われています。
帰還時の座席シートの調整
地球へ帰還する際に乗り込む宇宙船(ソユーズやクルードラゴンなど)の座席も、非常にタイトに作られています。特にロシアのソユーズ宇宙船は、着陸時の衝撃から身を守るために、飛行士一人ひとりの体の形に合わせて型取りをした専用のシートライナー(中敷き)を使用します。
身長が伸びて座高が高くなると、このシートに体が収まらなくなる恐れがあります。もし無理やり体を押し込めば、着陸の衝撃で脊椎を損傷する危険性も出てきます。金井宇宙飛行士が「帰りのソユーズに乗れるか心配」とツイートしたのも、決して冗談ではなく、命に関わる切実な問題だったのです。
宇宙での運動トレーニングの重要性
こうした体の変化やリスクを最小限に抑えるために、宇宙飛行士はISS滞在中、毎日欠かさず運動を行っています。その時間はなんと1日約2時間にも及びます。
ランニングマシンや自転車エルゴメーター、筋力トレーニング機器などを使い、骨や筋肉に意識的に負荷をかけます。これは筋力の低下を防ぐだけでなく、骨に適度な刺激を与えることで骨密度の減少を食い止め、背骨周りの筋肉を維持して腰痛を予防する目的もあります。宇宙での「背が伸びる現象」と付き合っていくためには、地道なトレーニングが欠かせないのです。
宇宙での「背が伸びる」現象と成長期の身長の伸びの違い

ここまでの話で、「宇宙に行けば大人でも背が伸びるんだ!」と期待した方もいるかもしれません。しかし、宇宙で起こる身長の増加と、中高生の時期に起こる「成長期」の身長の増加は、体の仕組みとして全く別の現象です。この違いを正しく理解しておくことが重要です。
椎間板の水分増加と骨の成長の違い
前述の通り、宇宙飛行士の身長が伸びるのは、骨と骨の間にある「椎間板」が膨らむからです。これは言ってみれば、背骨のパーツの隙間が広がっただけであり、骨そのものが長くなったわけではありません。だからこそ、重力がかかればすぐに元に戻ってしまいます。
一方で、成長期に見られる身長の伸びは、骨そのものが成長して長くなる現象です。大腿骨(太ももの骨)や脛骨(すねの骨)などが実際に伸びていくため、一度伸びた身長は重力がかかっても縮むことはありません。この「一時的な膨張」と「永続的な成長」が決定的な違いです。
成長期に骨が伸びる仕組み(骨端線について)
成長期に身長が伸びる鍵を握っているのが、骨の両端にある「骨端線(こったんせん)」という軟骨の層です。別名「成長線」とも呼ばれます。
この骨端線にある軟骨細胞が活発に増殖し、それが硬い骨へと置き換わっていくことで、骨は縦方向に伸びていきます。これが身長が伸びる正体です。骨端線は、男性なら17〜18歳頃、女性なら15〜16歳頃になると閉じて(硬い骨になって)しまい、それ以降は基本的に骨が伸びることはありません。
大人が身長を伸ばすことは可能なのか
残念ながら、骨端線が閉じてしまった大人の骨を、成長期のように伸ばすことは医学的に困難です。宇宙に行って一時的に背が伸びても、地球に帰れば元通りになるのが現実です。
ただし、大人が身長を高く見せる方法がないわけではありません。猫背や骨盤の歪みを矯正し、本来の正しい姿勢を取り戻すことで、埋もれていた身長を引き出すことは可能です。これは宇宙飛行士の椎間板の話と少し似ていて、圧迫されて縮こまっていた部分を本来の状態に戻すという考え方です。とはいえ、これも数センチの範囲内であり、骨そのものが伸びているわけではない点には注意が必要です。
姿勢矯正で身長が変わるメカニズムとの共通点
宇宙での伸長現象と、地上での整体やストレッチによる身長変化には共通点があります。それはどちらも「骨格のアライメント(並び)や隙間の変化」によるものだということです。
例えば、日頃から姿勢が悪く背骨が曲がっている人が、姿勢を正して背筋を伸ばすと身長が高くなります。また、朝起きたときに身長が高いのも、寝ている間に椎間板の水分が回復しているからです。宇宙での現象は、この「朝の身長」の状態が極端に大きくなったものと考えることもできます。つまり、姿勢を良くすることは、地球上でできる「プチ宇宙体験」と言えるかもしれません。
地球上で健康的に身長を伸ばすために必要な要素

宇宙に行かなくても、成長期のみなさんには身長を伸ばす大きなチャンスがあります。骨端線が閉じずに活動している間であれば、生活習慣を整えることで、そのポテンシャルを最大限に引き出すことができます。ここでは、地球上で身長を伸ばすために欠かせない重要な要素について解説します。
骨の成長に欠かせない栄養素の役割
骨を作る材料がなければ、いくら成長ホルモンが出ても身長は伸びません。最も有名なのは「カルシウム」ですが、カルシウムだけを摂っていれば良いわけではありません。
骨の土台となるのは「タンパク質(コラーゲン)」です。鉄筋コンクリートの建物で例えるなら、鉄筋がタンパク質で、そこを埋めるコンクリートがカルシウムです。さらに、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD」、骨への定着を助ける「ビタミンK」、骨の強度に関わる「マグネシウム」や「亜鉛」など、さまざまな栄養素がチームとして働くことで、丈夫で長い骨が作られます。
質の高い睡眠と成長ホルモンの分泌
「寝る子は育つ」ということわざは、科学的にも正しい事実です。身長を伸ばす「成長ホルモン」は、起きている間よりも寝ている間に、特に深い眠り(ノンレム睡眠)に入った直後に大量に分泌されます。
睡眠時間が短いと、この成長ホルモンの分泌量が減ってしまいます。また、寝る直前にスマートフォンを見たりして脳が興奮状態にあると、睡眠の質が下がり、ホルモンの分泌を妨げる原因になります。中高生は部活や勉強で忙しい時期ですが、しっかりと睡眠時間を確保することは、身長にとって何よりの特効薬です。
適度な運動が骨に与える刺激
宇宙飛行士が運動しないと骨が弱くなるのと逆に、地上では適度な運動が骨を強くし、成長を促します。骨には「縦方向の物理的な刺激」が加わると、骨を作る細胞が活発になるという性質があります。
特に、バスケットボールやバレーボールのようなジャンプする運動や、ジョギング、縄跳びなどは、骨端線に適度な刺激を与えるため推奨されています。ただし、過度な筋力トレーニングや、関節に負担をかけすぎる運動は逆効果になることもあるため、無理のない範囲で楽しく体を動かすことが大切です。
ストレスと生活習慣の影響
意外と見落とされがちなのが、精神的なストレスです。強いストレスを感じると、体内でコルチゾールなどのホルモンが分泌され、これが成長ホルモンの働きを阻害してしまうことがあります。家庭や学校での人間関係に悩んだり、過度なプレッシャーを感じ続けたりすることは、身長の伸びにも悪影響を及ぼす可能性があります。
リラックスする時間を作ったり、趣味を楽しんだりして、心身ともに健康な状態を保つことも、成長期には非常に重要な要素となります。
まとめ:宇宙飛行士の身長変化から学ぶ体の不思議
宇宙飛行士の身長が伸びる現象は、無重力によって椎間板が広がることで起こる一時的な変化であり、地球に戻れば重力によって元に戻ることがわかりました。金井宇宙飛行士のエピソードのように9センチも伸びることは稀ですが、環境が変われば私たちの体は驚くほど柔軟に変化します。
一方で、中高生の皆さんが迎えている「成長期」は、骨そのものが伸びる一生に一度の貴重なチャンスです。宇宙に行かなくても、地球上でできることはたくさんあります。特に「栄養」「睡眠」「運動」の3要素は基本中の基本です。
しかし、毎日の食事だけで必要な栄養素をすべて完璧に摂るのは、忙しい学生生活の中では難しいこともあるかもしれません。そんなときは、食事の補助として栄養バランスを整えるアイテムを上手に活用するのも一つの方法です。自分のライフスタイルに合った方法を見つけて、後悔のない成長期を過ごしてくださいね。




