「寒い地域に住んでいる人は身長が高い」という話を聞いたことはありませんか?例えば、北欧の人々は背が高いイメージがありますし、日本国内でも「北の方の地域は平均身長が高い」といった噂を耳にすることがあるかもしれません。
実はこれ、単なる噂ではなく生物学的な法則として説明されることがあります。それが「ベルクマンの法則」です。もちろん、身長が決まる要因は一つではありませんが、住んでいる地域の気候が私たちの体にどのような影響を与えているのかを知るのはとても興味深いですよね。
この記事では、寒い地域と身長の関係について、ベルクマンの法則を中心にわかりやすく解説します。また、遺伝だけではない「環境」が成長に与える影響や、成長期に身長を伸ばすために大切なポイントまで、詳しく見ていきましょう。
寒い地域の人は本当に身長が高いのか?ベルクマンの法則を解説

まずはじめに、今回のキーワードである「ベルクマンの法則」について解説します。なぜ寒いと体が大きくなるのか、その理由を知ると生物の不思議が見えてきます。
ベルクマンの法則とは何か
ベルクマンの法則とは、19世紀にドイツの生物学者クリスティアン・ベルクマンが提唱した説です。簡単に言うと、「恒温動物(体温を一定に保つ動物)は、寒い地域に住むほど体が大きくなり、暖かい地域に住むほど体が小さくなる傾向がある」というものです。
【ベルクマンの法則の基本】
・寒い地域(高緯度):体が大きい(大型化)
・暖かい地域(低緯度):体が小さい(小型化)
動物の例でよく挙げられるのが「クマ」です。熱帯に住むマレーグマは体長が小さく、日本などの温帯に住むツキノワグマは中くらい、そして北極圏という極寒の地に住むホッキョクグマは非常に巨大です。このように、同じ種や近い仲間同士で比べると、生息する場所の気温によって体の大きさに違いが出ることがあるのです。
なぜ寒いと体が大きくなるのか
では、なぜ寒いと体が大きくなるほうが有利なのでしょうか?その鍵は「体温維持」にあります。体温を一定に保つためには、体内で作った熱を逃がさないようにする必要があります。
体が大きくなると、体重(体積)に対する「体の表面積」の割合が小さくなります。熱は体の表面から逃げていくため、体の体積に対して表面積が小さいほうが、熱を奪われにくく、寒さに耐えやすいのです。逆に、暑い地域では熱を外に逃がす必要があるため、体が小さく表面積の割合が大きいほうが有利に働きます。
人間にも当てはまる?世界の傾向
この法則は、人間にもある程度当てはまると言われています。世界的に見ても、オランダやデンマーク、ノルウェーといった北ヨーロッパの寒い地域に住む人々は、平均身長が高い傾向にあります。一方で、赤道に近い東南アジアや中南米の地域では、比較的平均身長が低い傾向が見られます。
もちろん、人間は服を着たり暖房を使ったりして環境に適応してきたため、野生動物ほど単純ではありませんが、長い歴史の中で気候が体格に与えた影響は少なからずあると考えられています。
アレンの法則との関係
ベルクマンの法則とセットで語られることが多いのが「アレンの法則」です。これは「寒い地域の動物ほど、耳や手足、しっぽなどの突出した部分が短くなる」というものです。これも熱を逃がさないための適応です。
人間の場合、寒い地域の人は「体幹が太くがっしりしている(ベルクマンの法則)」一方で、「手足が比較的短い(アレンの法則)」という特徴が出ることもあります。しかし、現代の北欧の人々のように「高身長で手足も長い」というケースも多く、これには栄養状態など別の要因も強く関係しています。
日本国内でも寒い地域の方が身長は高い?統計データから見る傾向

世界規模で見ると「寒い地域=身長が高い」という傾向が見えましたが、日本国内ではどうでしょうか。南北に長い日本列島でも、地域による身長差はあるのかを見ていきましょう。
「北の地域は背が高い」という噂の真相
日本では昔から「秋田県や北陸地方の人は背が高い」といった話がよく聞かれます。実際に、文部科学省が毎年発表している「学校保健統計調査」などのデータを見てみると、興味深い傾向が浮かび上がってきます。
多くの年で、秋田県、青森県、石川県、福井県といった北東北や北陸地方の県が、平均身長の上位にランクインすることが多いのです。これはまさに、寒い地域の方が身長が高いというベルクマンの法則を連想させる結果と言えます。
沖縄と北海道・東北の比較
逆に、日本で最も暖かい地域である沖縄県はどうでしょうか。統計データを見ると、沖縄県は男女ともに平均身長が全国平均よりも低い傾向が続いています。また、九州地方や四国地方など、比較的温暖な西日本の地域も、北日本に比べると平均身長がやや低めの傾向があります。
このように、日本国内という限られた範囲であっても、「北高南低(北が高く南が低い)」という身長の傾向がある程度確認できるのは事実です。
寒さ以外の要因も考えられる
ただし、これをすべて「寒さのせい」と断定するのは早計です。例えば、食文化の違いも大きな要因です。東北や北陸は米どころであり、昔から美味しいお米と、保存食としての魚介類や発酵食品をしっかり食べる文化がありました。
また、都市部(東京や神奈川)も平均身長が高い傾向にあります。これは寒さではなく、経済的な豊かさや栄養状態の良さ、全国から人が集まることによる遺伝的多様性などが影響していると考えられます。つまり、気温はあくまで一つの要素に過ぎないのです。
身長が決まる要因は遺伝だけ?環境の影響力を知ろう

「親の背が低いから、自分も高くならない」と諦めていませんか?確かに遺伝は強力な要因ですが、それだけですべてが決まるわけではありません。
遺伝と環境の割合
一般的に、身長に対する遺伝の影響は約80%と言われています。しかし、残りの約20%は「環境要因」です。「たった20%?」と思うかもしれませんが、身長においてこの20%は非常に大きな差を生みます。
例えば、本来なら175cmまで伸びる遺伝子を持っていても、栄養不足や睡眠不足などの環境が悪ければ170cmで止まってしまうかもしれません。逆に、環境を整えることで、遺伝的なポテンシャルを最大限に引き出し、予想よりも背が伸びる可能性は十分にあるのです。
歴史が証明する「栄養」の力
環境がいかに大切かを示す良い例が、日本人の平均身長の推移です。江戸時代の日本人男性の平均身長は155cm〜160cm程度だったと言われていますが、現代では約171cmまで伸びています。
わずか100年ちょっとの間に遺伝子が急激に変化するはずはありません。これは明らかに、食生活が欧米化し、タンパク質やカルシウムの摂取量が増え、衛生環境や医療が整ったことによる「環境の変化」がもたらした結果です。
現代の子供たちに必要なこと
現代の日本は飽食の時代と言われますが、実は「質的栄養失調」の子供が増えているという指摘もあります。お菓子やインスタント食品でお腹はいっぱいになっても、骨や筋肉を作るためのビタミンやミネラル、良質なタンパク質が不足しているケースです。
特に成長期においては、「体を大きくするための材料」を毎日欠かさず体に入れることが、遺伝の枠を超えて身長を伸ばすための最大の鍵となります。
寒さ対策と成長の関係!冬場の過ごし方がカギ

寒い地域の方が身長が高い傾向があるとはいえ、ただ体を冷やせば良いわけではありません。むしろ、成長期において「冷え」は天敵とも言えます。冬場にどのように過ごすかが、春以降の伸びに大きく影響します。
体を冷やさないことが大切な理由
ベルクマンの法則は「何世代にもわたる進化の適応」の話であり、今生きている私たちが急に寒い場所に住めば背が伸びるわけではありません。むしろ、体が冷えると血管が収縮し、血流が悪くなります。
血液は、食事で摂った栄養素や、骨を伸ばすための成長ホルモンを体の隅々まで運ぶ重要なルートです。血流が悪くなると、せっかくの良い栄養も骨の成長部分(骨端線)までスムーズに届きにくくなってしまいます。冬場は特に、お風呂にゆっくり浸かって体を温め、血流を良くすることを意識しましょう。
日照時間の減少とビタミンD
寒い地域や冬の時期に気をつけたいのが「日照時間」です。骨を強くし、身長を伸ばすために欠かせない栄養素に「ビタミンD」がありますが、これは日光(紫外線)を浴びることで体内でも生成されます。
冬場や、日照時間の短い日本海側の地域では、どうしてもビタミンDが不足しがちになります。ビタミンDが足りないと、カルシウムの吸収率が下がってしまいます。冬は意識して、キノコ類や魚類などビタミンDを多く含む食材を食べる必要があります。
冬の運動不足を解消しよう
寒いとどうしても外に出るのが億劫になり、運動不足になりがちです。しかし、骨は「縦方向の刺激」を受けることで成長が促されます。ジャンプする動きや、走る動作が骨への良い刺激になります。
雪で外で遊べない場合でも、室内で縄跳びをしたり、ストレッチをして筋肉の柔軟性を保ったりすることが大切です。筋肉が硬くなると、骨の成長を妨げてしまうこともあるため、冬こそ柔軟体操をしっかり行いましょう。
成長期に身長を伸ばすために必要な栄養と習慣

最後に、寒い地域かどうかに関わらず、成長期の中高生が身長を伸ばすためにこれだけは押さえておきたい具体的な栄養と習慣について解説します。
骨と筋肉を作る「タンパク質」
「身長=カルシウム」と思っている人が多いですが、実は最も重要なのはタンパク質です。骨も、実はコラーゲンというタンパク質の繊維にカルシウムが付着してできています。例えるなら、タンパク質は建物の「鉄筋」、カルシウムは「コンクリート」です。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品を毎食バランスよく食べることが基本です。特に成長期は大人以上に多くのタンパク質を必要とします。
成長をサポートする微量栄養素
タンパク質やカルシウム以外にも、身長を伸ばすために欠かせない栄養素があります。
- 亜鉛:細胞の分裂を助け、成長ホルモンの働きに関与します。
- マグネシウム:カルシウムと密接に関係し、骨の強さを保ちます。
- アルギニン:アミノ酸の一種で、成長期に特に需要が高まります。
これらを普段の食事だけで完璧に摂取するのは、忙しい学生生活の中ではなかなか難しいこともあります。給食がない高校生などは、栄養バランスが崩れやすいため特に注意が必要です。
「寝る子は育つ」は本当
栄養と同じくらい大切なのが睡眠です。身長を伸ばす「成長ホルモン」は、寝ている間に最も多く分泌されます。特に、眠りについてから最初の3時間に訪れる深い眠り(ノンレム睡眠)の時に、大量に分泌されると言われています。
夜更かしをして睡眠時間が短くなったり、寝る直前までスマホを見て睡眠の質が下がったりすると、せっかくの成長のチャンスを逃してしまいます。「栄養」で材料を入れ、「睡眠」で組み立てる、このイメージを忘れないでください。
成長期のチャンスは一度きり
骨の両端にある「骨端線」が閉じてしまうと、もう身長は伸びません。この限られた期間に、いかに十分な栄養と睡眠をとれるかが、将来の身長を決定づけます。
寒い地域と身長の関係まとめ!ベルクマンの法則と日々の努力
今回は「寒い地域の人は身長が高いのか?」という疑問から、ベルクマンの法則や日本国内の傾向、そして成長に必要な要素について解説してきました。
要点を振り返ってみましょう。
- ベルクマンの法則により、恒温動物は寒い地域で体が大きくなる傾向がある。
- 日本国内でも、北陸や東北地方などの寒い地域で平均身長が高い傾向が見られる。
- ただし、身長が決まる要因は寒さだけでなく、遺伝と「環境(栄養・睡眠)」が大きい。
- 冬場は体を冷やさず、日光不足を食事で補う工夫が必要。
- 成長期の限られた期間に、十分な栄養素を摂取することが何より大切。
寒い地域に住んでいなくても、温かい地域に住んでいても、身長を伸ばすチャンスは誰にでもあります。大切なのは、遺伝だと諦めずに、食事や生活習慣という「環境」を整えてあげることです。
特に、部活動や勉強で忙しく、食事だけで必要な栄養をすべて摂るのが難しい中学生・高校生の場合は、便利なアイテムを上手に活用するのも一つの賢い方法です。自分のライフスタイルに合った方法で、悔いのない成長期を過ごしてくださいね。




