「最近、子供の身長の伸びが気になってきた」「しっかりと睡眠をとっているはずなのに、朝起きると体が痛いと言っている」……そんな悩みをお持ちではありませんか?
成長期のお子様を持つ親御さんにとって、身長や体格の成長は非常に大きな関心事です。食事や運動が大切であることはよく知られていますが、実は「睡眠環境」、特に毎日体を預けるマットレス選びが、成長に大きな影響を与えていることをご存知でしょうか。
「硬いマットレス」が良いのか、「柔らかいマットレス」が良いのか。この選択を間違えると、単に寝心地が悪いだけでなく、成長ホルモンの分泌を妨げたり、姿勢が悪くなったりする可能性さえあります。大切なお子様の成長期を無駄にしないために、正しい寝具選びの知識を身につけましょう。
この記事では、成長期の体に最適なマットレスの硬さや選び方について、理由とともにやさしく解説します。今日から実践できる睡眠環境の見直しポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
成長期に硬いマットレスか柔らかいマットレスか悩む理由とは

成長期のお子様にとって、マットレスの硬さがなぜ重要なのでしょうか。単なる「寝心地の好み」で片付けてはいけない深い理由があります。まずは、睡眠と成長のメカニズム、そしてマットレスが果たす役割について根本から理解していきましょう。
身長を伸ばす「成長ホルモン」と深い睡眠の関係
「寝る子は育つ」という言葉は、医学的にも正しいことが証明されています。身長が伸びる鍵を握っているのは、脳下垂体から分泌される「成長ホルモン」です。この成長ホルモンは、一日中均等に出ているわけではありません。もっとも活発に分泌されるのは、夜間の睡眠中、それも「深い睡眠(ノンレム睡眠)」に入っている時間帯です。
もし、体に合わないマットレスで寝ていると、無意識のうちに何度も寝返りを繰り返したり、体のどこかに痛みを感じたりして、睡眠が浅くなってしまいます。睡眠が浅いと、せっかくの成長ホルモンが十分に分泌されません。つまり、身長を伸ばすチャンスを自ら逃してしまうことになるのです。深くぐっすりと眠るためには、体がリラックスできる寝具環境が不可欠です。
骨の成長と寝姿勢の「S字カーブ」
人間の背骨は、真っ直ぐではなく、緩やかな「S字カーブ」を描いています。このカーブがクッションの役割を果たし、重たい頭を支えたり、歩くときの衝撃を和らげたりしています。成長期は、この背骨が大人と同じような正しいS字カーブを形成していく重要な時期でもあります。
寝ているときも、立っているときと同じように自然なS字カーブを保つことが理想です。しかし、マットレスが合っていないと、背骨が不自然に曲がったり、反ったりしてしまいます。日中に重力から解放されて骨が休まるはずの睡眠時間に、逆に骨に負担をかけてしまっては、健やかな成長は望めません。骨の成長を妨げないためにも、背骨のラインを正しく守れるマットレスが必要です。
意外と知らない「寝返り」の重要性
私たちは一晩に20回から30回ほど寝返りを打つと言われています。これは単に寝苦しいから動いているのではありません。寝返りには、体の一箇所に血液が滞るのを防いだり、布団の中の温度や湿度を調整したり、日中の活動で歪んだ体を整えたりする大切な役割があります。
成長期の子供は新陳代謝が活発で体温も高いため、大人以上に寝返りによる体温調節が重要です。適切な寝返りが打てないと、睡眠の質が下がるだけでなく、血行不良により成長に必要な栄養素が体の隅々まで行き渡りにくくなる可能性もあります。マットレス選びにおいて、「スムーズに寝返りが打てるかどうか」は、決して無視できないポイントなのです。
柔らかすぎるマットレスが成長期の体に及ぼす影響

「柔らかくてふかふかのベッドの方が、気持ちよく眠れそう」と考える方は多いかもしれません。確かに、寝転がった瞬間は包み込まれるような心地よさがあります。しかし、成長期の体にとって、柔らかすぎるマットレス(低反発マットレスなど)は、いくつかのデメリットを引き起こすリスクがあります。
腰が沈み込む「ハンモック現象」の危険性
柔らかすぎるマットレスの最大の問題点は、体の中で最も重い「腰(お尻)」の部分が深く沈み込んでしまうことです。これを「くの字」のような姿勢になることから、ハンモック現象と呼ぶこともあります。腰が沈み込むと、背骨のS字カーブが崩れ、猫背のような姿勢で何時間も過ごすことになります。
成長期の柔らかい骨格が、毎日長時間この姿勢を強いられると、姿勢の悪さが定着してしまう恐れがあります。また、腰への負担が集中するため、中学生や高校生といった若い年齢であっても、腰痛を引き起こす原因になりかねません。身長を伸ばすどころか、姿勢の悪化を招くのは避けたいところです。
寝返りが打ちにくく睡眠が浅くなる
柔らかい砂浜の上を歩くのが大変なように、柔らかいマットレスの上では体を動かすのに大きな力が必要です。体が沈み込んで固定されてしまうため、スムーズに寝返りを打つことが難しくなります。無意識のうちに筋肉に力を入れて寝返りを打とうとするため、脳が覚醒してしまい、深い睡眠が妨げられるのです。
また、寝返りが減ると、同じ姿勢が長時間続くことになります。これは特定の部位への圧迫を生み、血流を悪化させる原因となります。朝起きたときに「なんとなく疲れが取れていない」「体がだるい」と感じる場合、マットレスが柔らかすぎて、寝返りがうまく打てていない可能性があります。
熱がこもりやすく寝苦しさの原因に
低反発ウレタンなどの柔らかい素材は、体に密着する面積が広くなります。包み込まれる感覚は安心感を与えますが、一方で体とマットレスの間に隙間がなくなり、熱や湿気が逃げ場を失ってしまいます。
成長期の子供は汗っかきです。就寝中に大量の汗をかきますが、その湿気が発散されないと、布団の中が蒸れて不快な状態になります。この蒸れは、夜中に目を覚ます原因になったり、夏場の寝苦しさを助長したりします。快適な睡眠環境を維持するためには、ある程度の通気性が必要ですが、柔らかすぎるマットレスはその点で不利になることが多いのです。
硬すぎるマットレスも要注意!メリットとデメリット

「柔らかいのがダメなら、硬い布団やマットレスが良いはずだ」と考えるのも早計です。昔ながらの「せんべい布団」や、畳に直接寝るような硬すぎる環境もまた、成長期の体には負担となる場合があります。硬いマットレスの特徴を正しく理解しましょう。
体圧分散ができず局所的な痛みを引き起こす
硬すぎるマットレスや床に寝ると、体と接する面積が小さくなります。その結果、背中(肩甲骨)やお尻、かかとといった出っ張った部分に体重が集中してしまいます。これを「体圧分散ができていない」状態と言います。
体重が集中した部分は血管が圧迫され、血流が悪くなります。正座を長く続けると足が痺れるのと同じように、寝ている間に背中や腰が圧迫され続けると、痛みや痺れを感じるようになります。体はそれを回避しようと頻繁に寝返りを打ちますが、痛みのために何度も目を覚ましてしまい、結果として睡眠の質が低下してしまいます。
腰とマットレスの間に隙間ができてしまう
理想的な寝姿勢は、立っているときと同じ自然な背骨のラインを保つことです。しかし、マットレスが硬すぎると、背中とお尻で体を支えることになり、その間にある「腰」の部分が浮いてしまいます。腰の下に手のひらが入るほどの隙間ができている場合、腰が支えられていない証拠です。
腰が浮いた状態(反り腰に近い状態)で寝続けると、腰回りの筋肉が常に緊張し、休まることがありません。朝起きたときに腰に痛みを感じる場合、マットレスが硬すぎて腰が浮いている可能性があります。成長期の体は筋肉も発達途中であり、このような緊張状態は疲労回復の妨げになります。
硬いからといって姿勢が良くなるわけではない
「硬い寝具で寝ると背筋が伸びて姿勢が良くなる」という説を聞いたことがあるかもしれません。しかし、これは半分正解で半分間違いです。確かに、柔らかすぎて埋もれてしまうよりは、背骨が曲がるリスクは低いかもしれません。しかし、人間の体には凹凸があります。その凹凸を無視して真っ平らな硬い板の上で寝ることは、決して自然な姿勢ではありません。
無理に背筋を伸ばされた状態は、逆に背骨や筋肉へのストレスとなります。大切なのは「硬いこと」そのものではなく、「体の凹凸に合わせて適度に沈み込み、かつしっかりと支えてくれること」です。極端に硬い寝具は、成長期のデリケートな体にはおすすめできません。
成長期におすすめのマットレスの選び方とポイント

柔らかすぎもダメ、硬すぎもダメ。では、成長期のお子様にはどのようなマットレスを選べば良いのでしょうか。キーワードは「高反発」と「体圧分散」です。ここでは、失敗しないマットレス選びの具体的なポイントを5つに分けて解説します。
【ポイント1】適度な硬さの「高反発マットレス」を選ぶ
成長期の体に最も推奨されるのは、一般的に「高反発マットレス」や「やや硬め」と呼ばれるタイプです。これは、単に硬いだけでなく、加重に対して押し返す力(反発力)が強いマットレスを指します。
高反発マットレスの最大のメリットは、体が沈み込みすぎないため、正しい寝姿勢(S字カーブ)をキープしやすいことです。お尻などの重い部分は適度に受け止めつつ、過度な沈み込みを防いで下からしっかりと支え上げてくれます。これにより、背骨が自然なラインを描き、成長を阻害しません。
【ポイント2】寝返りをサポートする「反発力」
先ほど触れたように、寝返りは成長期の睡眠にとって非常に重要です。高反発マットレスは、バネのような弾力性を持っています。この弾力が、寝返りを打つ際の動きをサポートしてくれます。少ない筋力でコロッとスムーズに寝返りが打てるため、睡眠を中断することなく、深い眠りを維持できます。
逆に、低反発マットレスは衝撃を吸収してしまうため、寝返りを打つたびに「よっこいしょ」と力を入れる必要があります。スポーツや部活で疲れた体を効率よく回復させるためにも、楽に寝返りが打てる環境を整えてあげましょう。
【ポイント3】特定の部位に負担をかけない「体圧分散性」
「硬めが良い」と言っても、体圧分散性が低いカチコチのものはNGです。理想的なのは、表面は適度なソフト感があり、内部でしっかりと支えてくれる構造です。
例えば、ウレタンフォームの表面に凹凸加工が施されているものや、ポケットコイルのように一つ一つのバネが独立して動くタイプのマットレスは、体圧分散性に優れています。体の出っ張った部分は優しく沈み込み、その他の部分はしっかり支えることで、全身にかかる圧力を均等に逃がしてくれます。これにより、血流がスムーズになり、成長ホルモンが全身に行き渡りやすくなります。
【ポイント4】汗っかきな子供のための「通気性」
成長期はホルモンバランスの変化もあり、新陳代謝が非常に活発です。一晩にかく汗の量は大人以上とも言われます。そのため、マットレスの通気性は衛生面でも快適性の面でも重要です。
ウレタン素材のマットレスを選ぶ場合は、通気孔が設けられているものや、オープンセル構造(気泡が繋がっている構造)のものを選びましょう。また、樹脂繊維を網状に編んだファイバー素材のマットレスは、圧倒的な通気性を誇り、水洗いもできるため清潔に保てます。スプリングマットレスであれば、内部に空洞が多いボンネルコイルやポケットコイルも通気性は良好です。湿気対策を怠ると、カビの発生やダニの温床となり、アレルギーの原因にもなるので注意が必要です。
【ポイント5】成長を見越した「サイズ」と「耐久性」
中学生から高校生にかけては、身長が急激に伸びる時期です。「今はまだ小さいから」と小さなサイズの寝具を使っていると、すぐに足がはみ出してしまいます。窮屈な姿勢で寝ることは、骨の成長にとってマイナスです。
一般的に、マットレスの長さは「身長プラス30cm」が必要と言われています。将来的に身長が170cmや180cmになることを見越して、最初から一般的なシングルサイズ(長さ195cm程度)や、背の高い家系であればロングサイズのマットレスを選んでおくと安心です。また、体重も増加していく時期なので、すぐにヘタってしまわないよう、密度の高いしっかりとした素材のものを選ぶことが、経済的にも身体的にも賢い選択です。
【選び方のチェックリスト】
・腰が沈み込みすぎない「やや硬め(高反発)」か?
・寝返りがスムーズに打てる弾力性があるか?
・特定の部分が痛くならない体圧分散性があるか?
・湿気を逃がす通気性はあるか?
・将来の身長を見越した十分なサイズか?
睡眠の質を高めるための寝具環境と生活習慣

体に合ったマットレスを選ぶことは、成長のための大きな一歩です。しかし、それだけで完璧というわけではありません。マットレスの効果を最大限に引き出し、成長ホルモンをドバドバ分泌させるためには、その他の寝具や生活習慣も整える必要があります。
枕の高さとマットレスの相性
マットレスを変えると、今まで使っていた枕が合わなくなることがあります。柔らかいマットレスでは体が沈む分、枕は低く感じ、硬いマットレスでは体が高い位置にあるため、枕も高めのものが必要になる傾向があります。
理想的な枕の高さは、横向きに寝たときに背骨から首の骨が真っ直ぐになり、仰向けに寝たときに首のカーブが自然に支えられる高さです。首が無理な角度に曲がっていると、気道が狭くなってイビキの原因になったり、首や肩の凝りを引き起こしたりします。マットレスと枕はセットで考え、必要であれば高さを調整できる枕を選びましょう。
寝室の環境(光・温度・音)
深い睡眠に入るためには、寝室の環境づくりも欠かせません。成長ホルモンの分泌を促す「メラトニン」という睡眠ホルモンは、暗くなると分泌されます。豆電球などの小さな明かりも消して、真っ暗にして寝るのがベストです。どうしても真っ暗が怖い場合は、足元に暖色系の小さなライトを置く程度にしましょう。
また、室温も重要です。夏は26〜28度、冬は18〜20度程度を目安にエアコンを活用し、暑すぎず寒すぎない環境を保ちます。特に冬場は乾燥しやすいので、加湿器を使って湿度を50〜60%に保つと、風邪予防にもなり熟睡できます。
寝る前のスマホと食事のコントロール
現代の高校生や中学生にとって最大の敵は「スマートフォン」です。スマホの画面から出るブルーライトは、脳を覚醒させ、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまいます。少なくとも寝る1時間前にはスマホを手放し、脳をリラックスモードに切り替えることが大切です。
また、夕食のタイミングも重要です。胃の中に食べ物が残ったまま寝ると、消化活動のために内臓が働き続け、深い睡眠に入れません。寝る3時間前までには食事を済ませるのが理想です。部活や塾で遅くなる場合は、消化の良いものを軽く摂る程度に留めましょう。
まとめ:成長期のマットレス選びは硬さと柔らかさのバランスが重要
ここまで、成長期の身長とマットレスの関係について詳しく解説してきました。結論として、成長期のお子様には「柔らかすぎず、硬すぎない、適度な反発力を持った高反発マットレス」が最もおすすめです。
要点を振り返ってみましょう。
・柔らかすぎるマットレス:腰が沈んで姿勢が悪くなり、寝返りが打ちにくい。
・硬すぎるマットレス:血流が悪くなり、痛みで目が覚めたり、腰が浮いたりする。
・理想のマットレス:「高反発」で「体圧分散」ができるもの。正しい寝姿勢(S字カーブ)を保ち、寝返りをサポートする。
・その他のポイント:汗を逃がす通気性と、成長を見越したサイズ選びが大切。
睡眠は、勉強や部活で疲れた心と体を回復させ、未来の自分の体を作るための大切な「工事中」の時間です。その工事現場であるマットレスが不安定では、立派な建物(体)は建ちません。
「たかがマットレス」と思わずに、お子様の将来のために、ぜひ一度寝具環境を見直してみてください。質の高い睡眠環境を整えることは、親御さんがお子様に贈ることができる、一生モノの財産となるはずです。正しい寝具と、規則正しい生活習慣で、お子様の健やかな成長を全力でサポートしてあげましょう。



