部活動やスイミングスクールで平泳ぎを練習しているとき、「膝がなんとなく痛いな」と感じたことはありませんか。特に中学生や高校生の時期は、練習量が増えるだけでなく、体が一気に大人へと変化する成長期でもあります。そのため、膝の痛みが「泳ぎ方の問題」なのか、それとも「成長痛」なのか、自分では判断しにくいことが多いのです。
膝の痛みは、無理をして泳ぎ続けると慢性的なケガにつながり、大好きな水泳を長く休まなければならなくなる可能性もあります。しかし、痛みの原因を正しく理解し、適切なフォーム改善やケアを行えば、痛みをコントロールしながら記録を伸ばすことも十分に可能です。
この記事では、平泳ぎ特有の膝への負担と、成長期特有の痛みの違いをわかりやすく解説します。さらに、今日から実践できるストレッチやフォームのポイント、そして体の中から強くするための栄養管理についても詳しく紹介していきます。膝の不安を解消して、ベストタイム更新を目指しましょう。
平泳ぎで膝が痛むのはなぜ?成長痛とスポーツ障害の違いを知ろう

水泳は関節への負担が少ないスポーツと言われますが、平泳ぎだけは例外です。特殊な足の動きをするため、膝にねじれる力が加わりやすく、多くの選手が膝のトラブルを抱えています。まずは、その痛みの正体が「平泳ぎ膝」なのか、それとも「成長痛」なのかを見極めることが大切です。
膝の内側が痛む「平泳ぎ膝(スイマーズ・ニー)」とは
平泳ぎの選手に最も多く見られるスポーツ障害が、通称「平泳ぎ膝」または「スイマーズ・ニー」と呼ばれるものです。医学的には「膝内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)炎」や「鵞足(がそく)炎」などがこれに当たります。この痛みの最大の特徴は、主に「膝の内側」に症状が出ることです。
平泳ぎのキックは、踵(かかと)をお尻に引きつけた後、つま先を外に向けて水を蹴り出します。この「蹴り出し」の瞬間に、膝から下を外側にひねりながら伸ばすという、膝関節にとっては非常に不自然な力が強く加わります。この動作を何百回、何千回と繰り返すことで、膝の内側にある靭帯や腱が骨と擦れたり、引き伸ばされたりして炎症を起こしてしまうのです。
初期段階では泳いだ後に少し痛む程度ですが、悪化すると日常生活の歩行や、階段の上り下りでもズキズキと痛むようになります。特に、タイムを縮めようとしてキックの力を強めたり、足の引きつけを急激に行ったりする時期に発症しやすい傾向があります。中高生の選手は筋肉量が増えてキック力が強くなるため、その分だけ靭帯への負担も大きくなることを知っておきましょう。
お皿の下が痛む「成長痛(オスグッド病)」の特徴
一方で、成長期の中高生に非常に多いのが「オスグッド・シュラッター病」と呼ばれる障害です。一般的に「成長痛」として扱われることもありますが、実際にはスポーツによる「使いすぎ(オーバーユース)」が原因で起こる骨軟骨のトラブルです。この痛みの特徴は、膝の内側ではなく、「膝のお皿の少し下」にある骨の出っ張り(脛骨粗面)が痛むことです。
成長期の子どもは、骨が急激に伸びるスピードに、筋肉や腱の成長が追いつかないことがあります。すると、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が常にピンと張った状態になり、その筋肉がつながっている膝下の骨を強く引っ張ってしまいます。この状態で激しい運動を繰り返すことで、まだ柔らかい成長期の骨の一部が剥がれたり、炎症を起こしたりして強い痛みが発生します。
平泳ぎのキックでも、足を引きつける(膝を曲げる)動作や、強く蹴り出す(膝を伸ばす)動作で大腿四頭筋が激しく使われます。そのため、陸上競技やサッカーだけでなく、水泳選手でもオスグッド病に悩まされるケースは少なくありません。「骨が出っ張ってきて痛い」「押すと激痛が走る」という場合は、この可能性が高いでしょう。
あなたの痛みはどっち?場所とタイミングで見分けるポイント
痛みの原因がわかれば、対処法も変わってきます。まずは自分の膝の痛みがどちらのタイプに近いか、セルフチェックしてみましょう。一番わかりやすい指標は「痛む場所」です。膝の内側が痛むなら「平泳ぎ膝(靭帯の炎症)」の可能性が高く、お皿の下の骨が出っ張っていて痛むなら「オスグッド(成長に伴う障害)」の可能性が高いと言えます。
次に「痛むタイミング」もヒントになります。平泳ぎ膝の場合、ウィップキックで強く水を蹴った瞬間や、壁を強く蹴ってターンした直後などに鋭い痛みを感じることが多いです。また、泳ぎ終わった後にジンジンとした痛みが残ることもあります。一方、オスグッドの場合は、膝を深く曲げたり、正座をしたりした時に、膝下の出っ張りが床に当たって痛むことや、ジャンプ動作で強い痛みを感じることが特徴です。
もちろん、これらはあくまで目安であり、両方を併発しているケースもあります。また、半月板損傷など他の重大なケガが隠れている可能性もゼロではありません。「数日休んでも痛みが引かない」「歩くだけで痛い」といった場合は、自己判断せずに必ず整形外科を受診し、専門医の診断を受けるようにしてください。レントゲンやエコー検査で骨や靭帯の状態を確認することが、早期復帰への第一歩です。
【注意】痛みを我慢して泳ぎ続けるとどうなる?
スポーツに打ち込む中高生にとって、「練習を休みたくない」「レギュラー争いに負けたくない」という気持ちは痛いほどわかります。しかし、膝の痛みを「気合」で乗り切ろうとすることは、選手生命を縮める最も危険な行為です。特に成長期の膝は非常にデリケートな構造をしています。
平泳ぎ膝(靭帯炎)を放置して練習を続けると、靭帯が慢性的に緩んでしまったり、半月板というクッション軟骨がすり減ってしまったりする恐れがあります。一度損傷した半月板は自然治癒しないため、最悪の場合は手術が必要になり、長期間プールに入れない日々が続くことになります。
また、オスグッド病などの成長期障害を無理して悪化させると、剥離骨折(骨が筋肉に引っ張られて剥がれる骨折)に至ることがあります。こうなると、痛みが大人になっても残ったり、膝下の骨が異常に隆起して変形したまま固まってしまったりします。将来、水泳以外のスポーツや日常生活を楽しむためにも、「痛みは体からのSOS」と捉え、勇気を持って練習量を調整する判断が必要です。
膝への負担を劇的に減らす!平泳ぎの正しいキックフォーム

平泳ぎで膝を痛める最大の原因は、実は「フォーム」にあることが多いです。特に、推進力を求めて無理な蹴り方をしていると、膝関節には限界を超えた負担がかかります。ここでは、膝に優しく、かつしっかりと進むためのキックの技術的なポイントについて解説します。
膝を痛めやすい「あおり足」と「足首の固定」の関係
平泳ぎの初心者や、自己流で泳いでいる中高生に多く見られるのが「あおり足」という動作です。これは、水を蹴る瞬間に足首が伸びてしまい(底屈)、足の甲で水を撫でるように蹴ってしまう状態のことです。あおり足になると推進力が生まれないだけでなく、無理に水を押そうとして膝を過剰にねじってしまうため、膝への負担が激増します。
正しい平泳ぎのキックでは、足を引きつけた後、つま先を外側に向けつつ、足首をしっかりと直角に曲げる(背屈する)必要があります。足の裏全体で水を捉え、後方へ押し出すイメージです。この「足首の固定」が甘いと、水圧に負けて足首が伸びてしまい、そのねじれの力がすべて膝関節へと逃げてしまいます。
膝を守るためには、日頃から足首の柔軟性を高め、しっかりと「足首を曲げて(フレックスにして)蹴る」感覚を身につけることが重要です。足首が硬い選手は、どうしても膝を無理にひねって足の裏を後ろに向けようとしてしまうため、まずは足首のストレッチから始めることをおすすめします。
「ウィップキック」と「ウェッジキック」膝に優しいのはどっち?
平泳ぎのキックには、大きく分けて「ウェッジキック」と「ウィップキック」の2種類があります。昔ながらの「ウェッジキック」は、膝を広めに開いて、大きな円を描くように足を挟み込む泳ぎ方です。一方、現代の競泳で主流となっている「ウィップキック」は、膝の幅を狭く保ち、膝から下をムチのように素早く回転させて蹴る泳ぎ方です。
スピードが出るのは圧倒的にウィップキックですが、膝への負担という点では注意が必要です。ウィップキックは膝を閉じた状態で足先を外に開くため、膝関節に強い「外反(外側に反る力)」と「外旋(外側にねじる力)」がかかります。体がまだ出来上がっていない中学生や、股関節が硬い選手が無理に見よう見まねでウィップキックを行うと、膝の内側の靭帯を痛めるリスクが非常に高くなります。
もし現在膝に痛みがあるなら、一時的に膝の幅を少し広めにとったキック(ウェッジキック気味のフォーム)に戻すことを検討してみてください。膝を少し広げることで、膝関節へのねじれ負担が軽減されます。トップ選手のフォームが必ずしも自分にとって最適とは限らないため、自分の体の柔軟性に合わせたフォームを探ることが大切です。
股関節の柔らかさが膝を守る最大の防御壁になる
「膝が痛いから膝の治療をする」というのは対症療法にすぎません。根本的な解決のためには、「股関節」に目を向ける必要があります。平泳ぎのキックは、本来股関節の「内旋(内側にひねる動き)」という可動域を大きく使って行われます。
股関節が硬くて十分に動かないと、その分を補うために膝関節が無理な動きを強いられます。人間の体において、股関節は「可動性が高い関節」、膝関節は「安定性が求められる関節」です。動くべき股関節が動かないと、安定すべき膝が動かされ、結果として壊れてしまうのです。
特に、うつ伏せで膝を曲げ、足を外側に倒す動き(股関節の内旋可動域チェック)が硬い選手は要注意です。毎日のストレッチで股関節の柔軟性を高めることができれば、膝への負担を大幅に減らすことができます。膝を守るための鍵は、実は股関節が握っているのです。
キックの引きつけ動作で無理をしないコツ
キックの「蹴り出し」だけでなく、「引きつけ」の動作にも膝を痛めるリスクが潜んでいます。足を体に引きつける際、踵(かかと)をお尻に近づけようと意識しすぎるあまり、膝を急激に深く曲げすぎてしまう選手がいます。これは、大腿四頭筋(太ももの前)に強い伸張ストレスを与え、オスグッド病の痛みを誘発する原因になります。
また、引きつけの時に膝が極端に内側に入りすぎたり、逆にガニ股になりすぎたりするのも良くありません。スムーズな蹴り出しにつなげるためには、抵抗の少ない姿勢で、力まずにスッと引きつけることが大切です。引きつけは「蹴るための準備」であり、ここで力を使ってしまうと後半のバテにもつながります。
ポイントは、踵をお尻に無理やりくっつけようとしないことです。ある程度の位置まで引きつければ十分推進力は得られます。また、引きつけ動作中に股関節を少し緩める意識を持つと、膝への圧力が分散されます。自分の柔軟性に見合った「痛くない引きつけ幅」を見つけるよう調整してみましょう。
成長期スイマーのための「膝ケア」完全ガイド

日々の練習で酷使した膝は、適切なケアを行わないとダメージが蓄積する一方です。特に成長期の体は回復力が高い反面、損傷もしやすい状態にあります。ここでは、練習の前後に必ず行いたいケア方法について具体的に解説します。
練習前の「動的ストレッチ」で関節の動きをスムーズに
練習前に行うストレッチは、反動をつけて体を動かす「動的ストレッチ(ダイナミックストレッチ)」が基本です。筋肉や関節を温め、可動域を広げることで、泳いでいる最中の急な負荷によるケガを防ぎます。練習前にじっくり伸ばす静的ストレッチをやりすぎると、逆に筋肉が緩みすぎてパワーが出なくなることがあるので注意が必要です。
平泳ぎにおすすめの動的ストレッチは、「股関節回し」や「脚の振り上げ」です。立った状態で片足を前後に大きく振ったり、膝を曲げて股関節を外側・内側にリズミカルに回したりしましょう。これにより、関節内の潤滑液の分泌が促され、スムーズなキック動作が可能になります。
また、プールサイドで軽くスクワットやランジ(片足を前に踏み込む動作)を行うのも効果的です。ただし、この時点で膝に痛みがある場合は、深く曲げすぎないように調整してください。体がポカポカと温まり、関節が軽く感じる状態を作ってから入水するのが理想です。
練習後の「静的ストレッチ」で太ももの緊張をほぐす
練習が終わった後は、使った筋肉をゆっくりと伸ばして疲労物質を流す「静的ストレッチ(スタティックストレッチ)」を行います。ここでは反動をつけず、深呼吸をしながら20秒〜30秒かけてじっくりと伸ばすのがポイントです。
特に平泳ぎ選手が入念に行うべきなのは、「大腿四頭筋(太もも前)」と「ハムストリングス(太もも裏)」、そして「内転筋(内もも)」のストレッチです。大腿四頭筋が硬くなると、膝のお皿を引っ張る力が強くなり、オスグッド病の原因になります。立った状態で足首を持ち、お尻に踵を近づけるストレッチを丁寧に行いましょう。
内転筋のストレッチは、床に座って足の裏を合わせ、膝を地面に近づけるように押す「あぐらストレッチ」や、開脚ストレッチが有効です。内転筋の柔軟性は、平泳ぎのキックにおける膝のねじれストレスを軽減するために不可欠です。練習後だけでなく、お風呂上がりなどの体が温まっているタイミングで行うとより効果的です。
アイシングと温熱療法の使い分け
膝に痛みがある場合、「冷やすべきか、温めるべきか」迷うことがあると思います。基本的なルールとして、練習直後や急に痛みが強くなったときは「アイシング(冷却)」、慢性的な痛みや疲労回復には「温熱療法」を選びます。
練習直後に膝が熱を持っている、あるいはズキズキ痛む場合は、氷嚢(ひょうのう)や保冷剤を使って15分〜20分程度患部を冷やしましょう。これにより炎症の拡大を抑え、痛みを和らげる効果があります。ただし、冷やしすぎは凍傷のリスクがあるため、タオル越しに当てるなどの工夫をしてください。
一方、帰宅してお風呂に入る際などは、しっかりと湯船に浸かって体を温めることが大切です。温めることで血流が良くなり、傷ついた組織に栄養や酸素が運ばれやすくなります。特に成長痛や慢性の平泳ぎ膝は、筋肉の硬さが原因であることが多いため、温めて筋肉をほぐすことが回復への近道となります。入浴中のマッサージも効果的です。
痛みが強い時の練習調整と休息の重要性
どんなにケアをしていても、痛みが強く出てしまう時期はあるものです。そんなときは、勇気を持って練習メニューを調整しましょう。コーチに相談し、平泳ぎのキック練習を減らして、代わりに「プル(腕だけで泳ぐ練習)」の割合を増やしてもらうのが一般的です。
プルの練習は、膝への負担をほぼゼロにしながら、心肺機能や上半身の筋力を維持・強化することができます。足にプルブイを挟んで泳げば、下半身が沈むこともありません。平泳ぎの選手であっても、クロールや背泳ぎなど膝への負担が少ない種目で調整するのも一つの手です。
最も避けるべきなのは、「痛いけれど誰にも言わずに同じメニューをこなす」ことです。それは努力ではなく、将来へのリスクを高める行為です。痛みがある時は「治すことも練習の一部」と捉え、できる範囲で質の高いトレーニングを行うよう意識を切り替えましょう。
陸上で差がつく!膝を守るための筋力トレーニング

水中の練習だけでなく、陸上でのトレーニング(ドライランド)も膝のトラブル防止に大きく役立ちます。膝周りの筋肉を強化することで、関節にかかる衝撃を吸収し、安定させることができるからです。ただし、成長期の体には過度な重り(ウエイト)を使ったトレーニングは推奨されません。自分の体重を使った「自重トレーニング」を中心に紹介します。
膝周りを支える「大腿四頭筋」の正しい鍛え方
膝関節を安定させるために最も重要なのが、太ももの前にある「大腿四頭筋」です。この筋肉が天然のサポーターのような役割を果たし、着地やキックの衝撃から膝を守ってくれます。しかし、オスグッド病の痛みがある場合は、無理な負荷をかけると逆効果になるため注意が必要です。
痛みがある時でもできる安全なトレーニングとして、「パテラセッティング(タオルつぶし)」があります。長座(足を伸ばして座る)の姿勢になり、膝の下に丸めたタオルを置きます。そのタオルを膝の裏でギュッと押しつぶすように力を入れ、5秒キープして緩める、という動作を繰り返します。これなら膝を曲げ伸ばしせずに、大腿四頭筋を鍛えることができます。
痛みが落ち着いているなら、スクワットも効果的です。ただし、膝がつま先より前に出すぎないように注意し、お尻を後ろに引くようなフォームで行いましょう。正しいフォームで行うスクワットは、膝への負担を最小限にしながら下半身全体を強化できます。
推進力アップと膝負担軽減の一石二鳥「体幹トレーニング」
一見関係ないように思える「体幹(コア)」ですが、実は膝の負担軽減に大きく関わっています。体幹が弱いと、水中で姿勢が安定せず、腰が反ったり沈んだりしてしまいます。すると、下半身の動作がブレてしまい、キックの力がうまく水に伝わらず、無駄な力が膝にかかってしまうのです。
プランク(肘とつま先で体を支える姿勢)や、サイドプランクなどの基本的な体幹トレーニングを継続して行いましょう。体幹が安定すると、ストリームライン(けのび姿勢)がきれいに保てるようになり、水の抵抗が減ります。結果として、軽いキックでも進むようになるため、膝への負担が自然と減るという好循環が生まれます。
また、バランスボールを使ったトレーニングもおすすめです。不安定な状態で姿勢を保つ練習は、細かいインナーマッスルを鍛え、泳ぎの安定感を高めるのに役立ちます。
お尻の筋肉(殿筋)を使ってキックの負担を分散させる
平泳ぎのキックは、膝の曲げ伸ばしだけで行うものではありません。本来は、お尻の筋肉(大殿筋)や太ももの裏(ハムストリングス)を使って、股関節から大きく動かすのが理想です。膝周りの筋肉ばかりに頼った泳ぎ方(手打ちならぬ足打ち)をしていると、小さな膝関節にすべての負荷が集中してしまいます。
お尻の筋肉を意識するためのトレーニングとして、「ヒップリフト」があります。仰向けに寝て膝を立て、お尻を天井に向かって持ち上げる動作です。この時、膝ではなくお尻と太もも裏に力が入っていることを意識してください。
お尻の筋肉が使えるようになると、キックのパワーが格段に上がり、同時に膝への依存度が下がります。「膝で蹴る」のではなく「お尻で蹴る」感覚を養うことが、ケガ予防とパフォーマンスアップの両立につながります。
メモ:トレーニングの頻度について
筋力トレーニングは毎日やる必要はありません。筋肉は休んでいる間に修復され、強くなります(超回復)。週に2〜3回、水泳の練習がない日や軽めの日に行うのがベストです。
成長期のトレーニングは「自重」が基本!過負荷に注意
高校生になるとウエイトトレーニングに興味を持つ人も増えますが、身長が伸びている最中(成長スパート期)は、バーベルなどの重い器具を使った高負荷トレーニングには慎重になるべきです。骨端線(骨が伸びる部分)に過度な圧力がかかると、成長を阻害したり、関節を痛めたりするリスクがあるからです。
中学生や高校生の前半までは、自分の体重を使ったトレーニングで十分な強さを得られます。腕立て伏せ、懸垂、スクワット、ジャンプ系トレーニングなど、自重でも強度の高いメニューはたくさんあります。まずは自分の体を思い通りにコントロールできる筋力をつけることを優先しましょう。
もしウエイトトレーニングを行う場合は、必ず専門のトレーナーや顧問の先生の指導のもと、正しいフォームと適切な重量で行うようにしてください。自己流のウエイトトレーニングは、百害あって一利なしと心得ましょう。
強い体と骨を作る!成長期スイマーの食事と栄養管理

膝の痛みを治し、ケガに負けない体を作るためには、外側からのケアだけでなく、内側からの「栄養摂取」が極めて重要です。特に成長期のアスリートは、日常の活動エネルギーに加え、体の成長と練習の疲労回復という3重のエネルギーを必要としています。
成長期の体に起きている「骨と筋肉のアンバランス」とは
成長期には、身長が1年間で10cm以上伸びることも珍しくありません。この時、体の中では「骨」が先に急激に伸び、その周りの「筋肉」や「腱」の成長が後からついてくるという現象が起きます。まるで、骨というテントの支柱が急に高くなり、筋肉というテントの布がピンと張り詰めてしまうような状態です。
このアンバランスな時期は、筋肉が常に骨を引っ張っているため、オスグッド病などの痛みが起きやすくなります。この時期に必要なのは、骨の材料をしっかり届けて丈夫にすること、そして筋肉の柔軟性を保ち、修復を早める栄養素を十分に摂ることです。練習量に見合った食事が摂れていないと、体は自分の骨や筋肉を分解してエネルギーにしてしまい、ケガのリスクがさらに高まってしまいます。
膝の回復と成長に欠かせない「タンパク質」と「カルシウム」
体作りの基礎となるのが「タンパク質」です。筋肉、靭帯、腱、そして骨のベース(コラーゲン)もすべてタンパク質から作られています。激しい練習で傷ついた膝の組織を修復するためには、肉、魚、卵、大豆製品などのタンパク質を毎食しっかり摂る必要があります。特に練習直後は、筋肉の合成が活発になるゴールデンタイムなので、速やかにタンパク質を補給したいところです。
そして、骨を強くするために欠かせないのが「カルシウム」です。成長期は一生のうちで最も骨量が増える時期であり、ここでどれだけ骨を強くできるかが、将来の健康も左右します。牛乳や乳製品、小魚、小松菜などを積極的に食べましょう。また、カルシウムの吸収を助ける「ビタミンD(キノコ類や日光浴で生成)」や「ビタミンK(納豆、緑黄色野菜)」も合わせて摂ることが大切です。
食事だけで足りてる?運動量が多い中高生の栄養事情
水泳は全身運動であり、さらに水の抵抗や水温調節のために、陸上競技以上にエネルギーを消費しやすいスポーツです。成長期の中高生スイマーが必要とするカロリーや栄養素は、成人男性を上回ることもあります。
しかし、朝練で時間がなくて朝食が少なかったり、練習後の夕食が遅くなってしまったりと、3食の食事だけでは必要な栄養をすべてカバーしきれないのが現実ではないでしょうか。「たくさん食べているつもりでも、実は栄養不足」というケースは、ケガが治りにくい選手によく見られる共通点です。
成長期スイマーに必要な栄養素の目安
・エネルギー源(炭水化物):ご飯、パン、麺類
・体の材料(タンパク質):肉、魚、卵、豆腐、乳製品
・骨の強化(カルシウム・マグネシウム):牛乳、海藻、ナッツ
・コンディション調整(ビタミン群):野菜、果物
効率よく栄養を摂るための補食とサポートアイテムの活用
3度の食事で限界がある場合は、「補食(おやつ)」をうまく活用しましょう。練習前におにぎりやバナナでエネルギーをチャージし、練習後すぐにプロテインや牛乳、チーズなどを摂ることで、体の分解を防ぐことができます。
また、食事の好き嫌いが多い、食が細くて量が食べられないという場合は、成長期向けに開発された栄養補助食品やサプリメントを活用するのも賢い選択です。最近では、カルシウムやタンパク質だけでなく、成長ホルモンの分泌に関わるアルギニンや、疲労回復を助けるクエン酸などをバランスよく配合した製品も多く登場しています。
これらは「魔法の薬」ではありませんが、日々の食事のベースアップとして利用することで、骨の成長やケガの回復を強力にサポートしてくれます。自分のライフスタイルや体質に合ったものを取り入れて、膝の痛みに負けないタフな体を作り上げていきましょう。
もし、どのような栄養補助食品を選べばいいか迷っている場合は、同年代のアスリートや保護者に選ばれているものを参考にするのも良い方法です。自分に足りない栄養素を補って、ライバルに差をつけるチャンスに変えてください。
まとめ
平泳ぎの膝の痛みは、多くのスイマーが直面する壁ですが、正しい知識があれば乗り越えることができます。まず大切なのは、その痛みが「平泳ぎ膝(靭帯の炎症)」なのか、「成長痛(オスグッド病など)」なのかを見極めることです。痛む場所やタイミングをチェックし、必要であれば専門医に相談しましょう。
そして、痛みの根本原因となるフォームの見直しを行いましょう。足首のあおり足を修正し、自分の柔軟性に合ったキック幅を見つけることが重要です。また、練習前後のストレッチや適切なアイシング、お尻を使ったキックの習得など、日々のケアとトレーニングで膝への負担は確実に減らすことができます。
最後に、忘れがちなのが「栄養」の視点です。成長期の体は、骨と筋肉のアンバランスな成長や、激しい練習によるエネルギー不足に常にさらされています。食事と補食、そして必要に応じたサプリメントなどを上手に活用して、内側から強い体を作ることが、結果的に膝の痛みを予防し、ベストタイムへの近道となります。
膝の痛みは体からのサインです。無視せずにしっかりと向き合い、ケアをしながら、大好きな水泳を長く楽しんでください。


